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NOTES

ESSAY VOL.02

2015.04.12 text by 草刈民代

『アルジャーノンに花束を』

4月10日から「アルジャーノンに花束を」が始まった。

このドラマのお話をいただき、初めて原作を読んだ。文章における表現は多種多様だが、この小説、まずそのスタイルに感動した。

主人公は、知的障害を持っているのだが、実験的な手術を受けることになり、天才となる。知的障害者と天才、世間での立ち位置として、いわば両極を味わうことになるのだが、ストーリーはその主人公の視点で紡がれていく。

切なさを抱え、必死に生きていく主人公チャーリー。そのチャーリーの姿に、心が色々な形で刺激された。「読む」とは「運動」することなのだ。良い小説を読む醍醐味を改めて教えてくれた作品だった。

さて、今回私は主人公の母親を演じる。お話をいただいたとき、「主人公の母親役で、主演は山下智久さん」と聞いて、「??」と思った。「おいおい、私はもう、そんなに大きな子供がいる人の役をやるようになってしまうのかい」と。しかし、企画の概要を読んでいるうちに、山下さんがこの主人公といい感じで噛み合うと思ったし、山下さん演ずるこの主人公の母親であれば、違和感なくできるのではないか?という気がしてきたのだ。そして、ぜひやってみたいと思い、やらせていただくことにした。

私は、あまり多くの人と絡む役ではないが、今回の「アルジャーノン」は、山下さん演ずる主人公を取り巻く若者たちの友情も描かれていて、いま注目を浴びている若い魅力的な俳優さんたちが大勢出演なさっている。どんな作品になっているのか、とても楽しみだ。

この作品は野島伸司さん監修。野島さんはたくさんのヒット作を生み出している方だ。実は私、踊っていた頃はあまりテレビを観ていなかった。日々踊ることに追われていて、全くテレビを見ない日もあったほど。野島さんの作品は断片的に覚えているものもあるが、どんな作品を創っていらっしゃるのだろうかと、改めて調べてみた。

まずお写真を拝見したら、あまりにもイケメンでびっくり♡。しかし、思い返してみると、このお顔、新聞や雑誌で何度もお見かけしたことがある。そして私と年齢が2つしか変わらなかったことにも驚いた。「101回目のプロポーズ」をお書きになったのは20代後半。野島さんは長く活躍なさっているので、(なんとなくイメージで)もっと年齢が上の方なのかと思っていたら、ほぼ同世代の方だった。20代からあんなに人を惹きつける作品を生み出していたなんて、凄い人だ。

いくつか作品を拝見して印象に残ったのは、登場人物が「生きる熱量」みたいなものを発散していることだった。20年くらい前と今とは何かが大きく違っている。「熱」の「量」が違うのか、「質」が違うのかわからないけれど、人々のメンタル(時代のメンタルというべきなのか)がかなり変わってきていると感じることが多い。登場人物の表現の仕方やあり方が、今の時代のそれとは違うように見えた。そして、「時の流れ」についてしみじみと考えることになった。

自然災害、テロ、政治的な問題などなど。日々色々なことがニュースになっている。世の中で起こっているすべての事柄の動向によって、人のメンタルは移行していく。というか、させられてしまう。人はそのなかで生きているのだ。ちょっとやるせない気持ちにもなった。

野島作品から私が感じた登場人物の「生きる熱量」とは、「切実さ」のようなものでもあるのかな。思いをストレートに伝えようとする「熱量」や「切実さ」を抱えた人たちが物語を形作っていて、多くの人がそこに共鳴していたのだろう。

共鳴できるものとの出会いによって、人は気持ちを晴らすことができる。世の中、深刻なことも多々起こっているが、だからこそ、しっかり意識を持って生きていきたいと思うのだ。人の気持ちを晴らしたり、自分の気持ちを晴らしてもらったり。躍動的でありたいと思う。

「アルジャーノンに花束を」は毎週金曜日10時からTBSで放送しています。 観てくださいね!

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