2007.07.26  
初夏のイタリア『スポレート・フェスティバル』 by草刈民代

初夏のイタリア『スポレート・フェスティバル』

みなさん、いかがお過ごしですか?
イタリアのスポレートは、毎日晴天で、空気もからっとしていて、とても過ごしやすかったです。しかし、東京は台風などが来ていて、空気がかなり湿気ていますね。

この湿気に負けず、毎日元気に過ごしましょう!!

スポレート・フェスティバルの様子

日本からイタリア・スポレートへ

7月3日『豊田シティバレエ』の公演本番を終えると、翌日には、愛知県・中部国際空港からドイツ・フランクフルト経由で約16時間かけてイタリア・ローマに到着。空港には、『Spoleto Festival』という紙を持ったおじさんが迎えに来ていました。すぐに出発かと思ったら、おじさんは「Just moment」。まだ誰かを待つようです。しばらくすると、がっちりした男性が現れました。オーストリア・ウィーンから到着した歌手の方で、一緒にスポレートへ。

『スポレート・フェスティバル』

スポレートは、イタリアの首都ローマから車で2時間位のところにあり、トリュフとオリーブオイルが特産のとても美しい町でした。ところが、昔はそれほど知名度がなく、『スポレート・フェスティバル』が行われるようになって、スポレートという町が認知されるようになったのだそうです。

『スポレート・フェスティバル』は、現代オペラの作曲家、ジャンカルロ・メノッティ氏(今年2007年2月に逝去)により50年前に創設されたそうです。現在では、このフェスティバルは世界的な芸術祭として知られるようになったそうで、3週間の開催期間中には、ダンス、音楽、映画などの催し物が行われています。

7月7日に行われたメノッティ氏の記念コンサート
7月7日に行われたメノッティ氏の記念コンサート

私が踊ったのは、テアトロ・ロマーノ(ローマ劇場)という野外劇場でした。客席は、舞台を囲むように石の階段が半円状に広がり、その階段に座布団を敷いてお客さんが座るようになっています。

テアトロ・ロマーノ(ローマ劇場)という野外劇場

野外劇場での夜のリハーサル

7月5日の夜は9時半から舞台リハーサル。日中は日が照っていてとても暖かかったのですが、日が落ちると肌寒く、夜になるともっと寒くなりました。

余談ですが、野外劇場での夜のリハーサルといえば思い出すのが、2005年の愛知万博でのリハーサルです。

閉館時間になってから、舞台上の仕込みを始めたので、音楽をかけてリハーサルができる状況になったのが夜中の1時。しかも、5月の上旬でまだまだ野外で踊るには寒い時期でした。息を吐くと、白くなってしまうほどの寒さ!その中で衣裳を着て踊りましたが、寒過ぎて、どのくらい体が動いているのか全く分からないまま踊っていました。その時に比べたら、今回は全然まし。なんでも経験しておくものですね。

2005年に行われた愛・地球博『星降る夜のパ・ド・ドゥ』の模様>>

初日の後の食事会で。左からレモンド・レベック、アメリカから出演した女の子、草刈民代、スイス・バーゼルで踊っている中野綾子さん
初日の後の食事会で。
左からレモンド・レベック、アメリカから出演した女の子、草刈民代、スイス・バーゼルで踊っている中野綾子さん

さて今回は、以下4カップルのプロフェッショナルのダンサーと、『ユース・アメリカ・グランプリ』というアメリカ・ニューヨークで毎年行われているコンクールの出場者が『スポレート・フェスティバル』に出演しました。

■Gregor Hatala and Maria Yakovleva 【Vienna State Opera】
■Paloma Herrera and Gennadi Saveliev 【American Ballet Theatre】
■Ayako Nakano and Sergio Bustinduy 【Basel Ballet】
■Tamio Kusakari 【Asami Maki Ballet】and Raimondo Rebeck 【Aalto Ballet Essen】

『ユース・アメリカ・グランプリ』から出演したのは、11歳から19歳位までの20人で、4人の日本人を含めアメリカ、キューバ、アイルランドのダンサー達でした。まだ子供と言える年齢の子や、10代の若いダンサーと舞台を共にしました。

スイス・バーゼルの劇場で踊っている、プロフェッショナルダンサー・中野綾子さんは、スペイン人のご主人と一緒に出演し、バーゼル歌劇場のディレクターRichard Wherioo氏の、素敵な作品を披露しました。

舞台袖での光景

私は、『ユース・アメリカ・グランプリ』の男性シニア部門の一位になった、17歳のアメリカ人、ジム・ノワコウスキー君の舞台袖での光景がとても印象に残りました。

彼は、コンテンポラリーのデュエットと、『ダイアナとアクティオン』の男性ソロを踊ったのですが、一部のデュエットを踊り終わってから、二部に出演するまでの間、舞台袖でずっとiPodで音楽を聴いて集中していました。何を聴いていたのかは分かりませんが、もしかしたら、これから踊るソロの音楽だったかもしれません。かなり根を詰めて、集中して聴いているように私には感じられました。あるいは、完璧に踊らなくてはならない、というプレッシャーと闘っているようにもみえました。

彼は、高い技術を持っていて、コンクールでも大変な人気だったそうです。彼の出番となり、私も袖から見ていましたが、出番前に力み過ぎていたせいか、本領は発揮できなかったように感じました。その様子をみながら、私は自分の若いときのことを思いだしてしまいました。

私も、こういうことを繰り返していたなぁ、と。

こういう光景に、ダンサーという仕事の大変さや厳しさが凝縮されているような気がして、珍しくノスタルジーに浸ってしまいました。

踊る姿に、その子自身のドラマが見える

今回は、学生も出演したガラ公演でしたが、公演を観ていた夫は「子供の踊りを見ていると、気が和む」と言っていました。一生懸命踊る姿に、その子自身のドラマが見えるのでしょうか。

このように、コンクールで上位になった子供や若者とプロフェッショナルのダンサーが一緒の舞台に上がる形での上演は、『スポレート・フェスティバル』では初めてだったそうです。私も、良い公演に参加することが出来て、良かったと思っています。

『スポレート・フェスティバル』カーテンコール
カーテンコール

『スポレート・フェスティバル』ダンス部門のディレクター、グレゴール・ハタラさんと。なんとガーデン!パーティーで。寒かった…
『スポレート・フェスティバル』ダンス部門のディレクター、グレゴール・ハタラさんと。なんとガーデン!パーティーで。寒かった…

私はレモンド・レベックとローラン・プティ氏の『ピンク・フロイドバレエ』と『レダと白鳥』を踊りました。これは夫が撮影をした写真です!!

『ピンク・フロイド・バレエ』より『ヘイ・ユー』『ピンク・フロイド・バレエ』より『ヘイ・ユー』

『レダと白鳥』『レダと白鳥』

来月は、スポレートの観光記を…
お楽しみに

では、また(^-^)v(^-^)v

『スポレート・フェスティバル』
公演詳細(イタリア語)>>>>