周防正行の『バックステージ日記』

会場、深夜のリハーサル

2005.05.10

前日の夜、会場入りした草刈は、音響チェックのあと、午前0時よりゲネプロ。会場では、連日他の催し物もあるので、深夜のリハーサルとなった。舞台スタッフの最終作業が続く中、ダンサーは本番に備えて午前2時にホテルに戻る。

2005.05.11
初日。「愛・地球広場」の人工芝に、約6000人の観客が集り、地べたに座って野外バレエを楽しむというクラシック・バレエには馴染のない光景。夕暮れ時の刻々と変わる空の色を背景に観客の徐々に高まる期待を感じながら、いよいよ午後七時開幕。

会場、地べたに座って野外バレエ

2005.05.12

夕方、突然の豪雨に見舞われ、中止に。初日の盛り上がりに自信を得ていたこともあって、野外ならではのアクシデントに、関係者一同、うらめしく空を見上げていた。

2005.05.13
この日、後ろの方からではよく見えない、という声があったということで(予想以上の観客数だった)、急遽、舞台背後の大型スクリーンを使うことに決定。リハーサルする間も無く、簡単な打合せのみでぶっつけ本番のスクリーン演出。しかし、「レダと白鳥」は、スクリーンに映し出すことで、生の舞台とはまた一味違う幻想的雰囲気を醸し出し、観客の評判はすこぶる良かった。
  
会場、地べたに座って野外バレエ

2005.14・15

結局、最終日までより効果的なスクリーン演出の試行錯誤を続けながらの公演となったが、日に日に増える観客に、振付指導もしたルイジ・ボニーノ氏は、「世界中で踊ってきたけど、野外で、それもこんなに大勢の人の前で踊ったことはない」と興奮し、舞台でのスピーチは熱を帯びた。万博で踊ることは、劇場で踊ることとは少し違う。バレエを観に劇場へ来た観客とは違って、万博のお客様は多くの展示物やイベントの中の一つとしてこの会場を訪れ、この場で始めてバレエを体験する人も多かったはずだ。そこで草刈は、作品選びから演出まで、初めての人でも楽しめるような工夫を凝らした。その成果は、会場を去る人たちの表情を見れば明らかだった。多くの人に観ていただけたということは、確かに大きな成功だったが、それよりも、観客の楽しそうな笑顔がキャストやスタッフ、そして草刈に大きな達成感をもたらしたことと思う。身内の感想だけれども、こんな雰囲気の楽しいバレエ公演というのは、初めてだった。舞台を見るお客さんの「夢中」ぶりが、手に取るように伝わってきたのである。

2005年は、初めてのプロデュース公演を無事成功させることができました。
2006年は、もう少し規模の大きなプロデュース公演に挑戦しますので、楽しみにしていて下さい。

by 草刈民代

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