今月のお話 第四回
2014.07.10text by 草刈民代
対馬で山登りをした。私が山登り? なんとも想像し難いかもしれない。でも最近、木が生い茂っている道を歩くことにハマりつつあるのだ。
先月淡路島に行った時、伊弉諾(いざなぎ)神宮を訪れた。お参りをしながら清々しい空気に包まれた境内を一周し、出口に向かう途中「陽のみちしるべ」というモニュメントがあった。そこには伊勢神宮と、伊弉諾神宮と、対馬の海神神社は北緯34°27′23″のラインの同一線上にあり、秋分春分には伊勢から太陽が昇り、対馬の海神神社に沈むことになると書いてある。
「へー」と頷きつつも、その時点ではわかっているような、いないような。なぜかといえば、そのモニュメントには「對馬」と書いてあり、「どこの国なんだろう?」くらいに思っていたのだ。
その夜、ふと思い出し「對馬」というのはどこの国なのだ?という疑問を解消すべく、ネットで検索をした。「對馬」=「対馬」。日本ではないか!そういば「壱岐対馬」と学校で習ったような覚えがある。高校を一ヶ月で中退した私は、多くの人よりも学校に行っている時間が短い。こういうときによく不便な思いをする。というか、恥をかく。
「對馬」が長崎県の島だと知って、俄然興味が湧いてきた私は、対馬のことを調べているうちに、白嶽という山の写真を見た。そして、登ってみたくなったのだ。
思い立ったら即実行の私は、淡路島にいる間に「来月は対馬だ!」と夫に伝え、その時点で夫の予定が入っていない日を押さえてもらった。優しい夫は呆気にとられたまま、私に従ってくれた。今忙しいのに! 良い夫である。
さあ、これから対馬の白嶽登山の始まり。「この写真の奥の方に先の尖った2つの頂上が見えますが、この左側の頂上が目指すところです」と、ガイドの方から説明を受け、唖然とする。
あの奥の左側の尖ったところが目的地。あんな遠くまで行けるの!?
ガイドをしてくださったのは対馬観光物産協会の中島さん。
頂上まで2キロちょっと。しかし、後半は急斜面もあり、通常の2キロのようには歩けない。結局、休憩を入れて往復4時間となった。
初めのうちは平坦だが、苔や枯れ葉などに気をつけながら歩く。原生林の中、緑のシャワーを浴びながら歩くのが心地よい。
途中途中で説明を聞きながら。この岩の下の方には人が雨宿り出来るくらいの隙間がある。その昔、行者たちはここで休みながら修行をしたそうだ。
ちょっと休憩。
これから更に急になります。
その時夫は・・・・
辛そう! (演技です by 夫)
目指すは、あの頂上。本当にあそこまで行けるの??
結構危険! 慎重に、慎重に。
あとちょっと!
頂上に到着!清々しい!
ガイドの中島さんと3人で記念撮影。中島さんの素晴らしいガイドのおかげで楽しく登ることができました。
しかし、、、カメラを向けられた時以外は、この有り様。実は高所恐怖症気味の私。頂上は怖かった〜。「みんなぁ! 動かないで〜! 怖い〜! そんなとこに立って写真撮らないでぇ〜!」と叫びまくり。
これは、向かい側の岩。この山の御神体となっているのだそう。対馬は歴史が古い島なので、古代信仰から引き続いているものもあるようだ。確かに神々しい岩。古(いにしえ)の時代から人々に敬われてきた歴史までも纏っているような、その存在感は特別なものだった。
山登りは非日常を味わえるもの。山の中は日常とは違う世界。山登りにハマる人の気持が想像できるようになった。山の中は危険だから緊張感も高いが、空気も景観も、日常とは全く違う場所での小さな挑戦。こういう刺激、心地良い!