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今月のお話 第三回

2014.05.06text by 草刈民代

質素だが特別な一品。

10日ほど前、デパートで面白い野菜を見つけた。菊芋といって、小さくてちょっとボコボコといびつな形をしている芋だ。

菊芋。生姜のような形をしている。

「これ、どうやって食べるんですか?」と聞くと、「味噌漬けで食べると美味しいですよ!」と店員さん。早速やってみようと、その菊芋と、そのとなりにあった島らっきょうを買ってみた。実は島らっきょうを目にしたのも初めてだった。


家に戻り、早速クックパッドで調べてみる。あったあった、菊芋の味噌漬け。しかし「塩水に5日間漬けてアク取りをして、それから味噌に漬けて一週間置く」と書いてある。ずいぶんと時間がかかるなぁ、と思いながら実践してみる。食べられるまで、あと数日の辛抱だ。無事食べられるといいけれど。


そして島らっきょうは、一分ほど熱湯で湯がき、ごま油で炒めて、かつお節とお醤油で食べることにした。エシャロットのような風味と、ほのかに苦味がある葉の歯ごたえ。ごま油とお醤油とかつお節がピッタリと合い、私にとって初のこのシンプルなお皿が、その日の食卓を特別なものにした。

島らっきょうの炒めもの

質素だが特別な一品。今まで食べたことがなかったもの、あるいは、調味料にしてはちょっと値が張るけれど、美味しそうな物を見つけて使ってみた時など、とても楽しい気分になるものだ。こういう素朴な楽しみが、家庭の食卓での贅沢。夫と二人で「美味しい」と言いながら食べていると、こういう時間は幸せな時間で、こういう時間を過ごせることを「ありがたい」としみじみ思う。そんなことを思うようになるなんて、若い頃は想像すらしなかった。年を取ってきた証拠だね。


過ぎたるは及ばざるが如し。

年を取ってきたといえば、最近思う一番の変化は食事の量だ。以前なら夫も、かなりな量を平らげていたはずなのに、最近「もう食えね〜」と言うことが多くなってきた。何事も程々で止められない私は、食事を作るときもその性質が作用して、量や品数がどうしても多めになってしまう。作っているうちに何か閃くと、その場でメニューが変わったり、もっとひどいのは、良かれと思って作った量が、想像を超える大量だったなんていうこともしょっちゅうだ。食べ物を残せない性分の夫は、以前なら「お腹いっぱい」と言いながらも食べてくれていたのに、最近では作る前から「そんなに沢山食べられないからね」と釘を刺す始末。もう気ままに作るのはやめようと、考えを改めざるを得なくなった。


過ぎたるは及ばざるが如し。
薬も過ぎれば毒となる。


健康を気遣って、料理の内容を考えていたつもりだったが、「作り過ぎ」がすべてをぶち壊していたかもしれない。これからは気をつけます!

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